耳下腺がんの手術をした直後、どんな状態になったかをまとめておこうと思います。
耳たぶの裏あたりにある耳下腺には脳から来た顔面神経が通っていて、耳下腺で枝分かれし、おでこ、目、鼻、口などの顔の各パーツに神経がつながっています。
niyonの場合、この耳下腺にあった3.5cmほどの腫瘍が顔面神経にまとわりついていました。
悪性の場合、このように神経にまとわりついて(=神経浸潤して)いることが多いそうです。
神経を切ると顔の動きに麻痺が出るので、普通は残す方向で手術します。(特に良性の時は)
でも術中に腫瘍が悪性だと判明したため、とにかく転移する恐れのある悪性腫瘍を取りきることが優先となり、やむなく耳下腺にある顔面神経はほぼ切断されました。
かろうじて、切らずに残った神経はおでこや眉へ続く神経だけ。
目や鼻、口に続く神経はほとんどが切断されました。
腫瘍を取った後、同時に形成外科医による神経再建手術が行われました。
肩につながる首のあたりの神経をいくつか持ってきて切った神経の箇所に人工的につながれました。(と後で知ってびっくり。)
でも神経ってそんなに簡単につながるものではなく...。
●手術直後の麻痺
手術直後、基本的に顔の左半分(左の耳下腺を切ったから)はすべて動かなくなりました。
耳周り、つまり耳後ろから首、顔にかけては、触っても感覚がありません。
手術で耳下腺を触ると、神経を切断しなくとも術後直後は一旦顔面麻痺が出ることがほとんどだそうです。が、私の場合は一旦神経を切断しているのでどこまで回復するか不明でとても怖かったのを今も覚えています。
特に目と口の麻痺は、生活に不便が伴います。
加えて、鏡で自分の顔を見た時のショックときたら!
どんなに力を入れても顔の半分は全く動かず。
笑顔を作ろうとすると半分しか動かないので顔がゆがみます。
本当に精神的にきつい日々でした…。
神経再建がうまくいったとしても、動きが戻ってくるのは何か月も後なのです。
本当に顔の運動機能が戻るかどうかもわかりません。
まず目。
左目だけ、パッチリ開けたり、目を閉じたり、まぶたを自分の意志で動かせません。
常に、ぼーっと眠そうな感じで目が開いています。
瞬きもできず常に目が開いているので、防衛反応で乾きを防ごうと目からは涙が溢れます。
手術後、麻酔が切れた状態から左目は涙があふれている状態で、前がちゃんと見えません。
もちろん本もスマホやテレビの画面も涙で歪んでちゃんと見えない!
術後のメールのやり取りも辛く、本当に不便でした。
主治医からまぶたにテープを張って強制的に左目だけ常に閉じておくこともできると提案されましたが、、、顔や首が思うように動かない中で片目生活に自信がなかったので、このまま様子を見たいと伝えました。
手術10日後には涙がだんだん減ってかなりスマホの画面もテレビも見れるように。
ただ今度は目の乾燥により角膜に傷がついて失明しかねないと言われ、主治医から涙成分の目薬を処方してもらい、1日何度も目薬をさす毎日が1~2か月くらいは続きました。
次に口。
左側がうまく動かないせいで、口が少ししか開きません。
入院中大好きな苺を差し入れてもらいましたが、、、小さめの苺でも口に入らない。
1個を1/4にカットして、やっと口にねじ込めました。(食い意地はりすぎ?)

↑手術3日目の食事。まだお粥です。
口開かないから仕方ないけど、飽きたー。
量が多いわりに、ほぼ水分なのでお腹がすぐ減るのです。
口に「ん」と力を入れることもできないので、最初はコップから水を飲むのも難しい。
いつもの調子で飲もうとすると、こぼれるこぼれる(笑)。
手術直後はストローも使ってみましたが、徐々に動く右側の口で飲むことを覚えました。
のどが渇いていてもごくごくは飲めず、水もお茶も少しずつ、少しずつです。
歯ブラシも横にしてやっと口に入る程度しか、口が開きません。
もちろん、くちゅくちゅうがいも簡単ではなく。
いつも通りやると、左側の口から水がぶわーっとこぼれます。
歯みがきの時はふくむ水を少量にして、こぼれないように左側の口を手で押さえて、何とか攻略。
これで虫歯にでもなったらシャレにならないし、口が大きく開かないので今後歯医者で治療とかできるの???
不安がどんどん募ります。
一生このままだったらどうしよう、と。
神経再建のために持ってきた神経は肩につながる神経の一部だったそうですが(あとで言われた…)
形成外科の先生が心配しておられた肩が上がらないということは幸運にもありませんでした。
ただ、首のリンパにも1か所転移しておりメスを入れたためか
術後1か月くらいは腕が上げにくかったです。
顔の麻痺は、精神的なショックもかなり大きかったのでした。
腫瘍が悪性=癌であったこと
顔に現在かなりの麻痺が出ていること
それによる生活の不便があること
目と口が動かないだけで表情がかなり乏しく見えること
笑うと顔がゆがみ、気持ち悪い顔になること
もしかしたらこの麻痺が一生続くかもしれないこと、、、
悲しくなる事実ばかりでした。
神経を切っていないおでこも、もちろん目じりも、力を入れても笑顔を作ろうとしても
シワ1つ入りません。
つるっとして、感覚もなくて、アンドロイドみたい、と思いました。
服を着たら見えない場所だったらどんなに良かったか、
こんな顔で一生生きていくくらいなら、手術せずにそのまま放置して死んだほうが良かった?
ほんまにやった方がいい手術やったんか…?
やらない方が良かったんちゃうかな?
そんな思いも何度もこみ上げました。
コロナで家族のお見舞いもなく(病院が禁止している)
悲しみと苦悩を直接吐き出せる相手もなく
家族とはLINEメッセージだけでやり取りする日々。
夫は仕事がかなり忙しい時期、あまり心配をかけたくない。
父親からはきれいごとのような安っぽい励ましの言葉が。
娘の一大事にまるで人ごとのような態度に怒り狂いました。
憶測では、私の状態を見ていないから楽天的に考えていた、夫が配慮して深刻すぎないよう手術状況を伝えた、父親の語彙不足、父親が人の感情を慮る能力がない、これらが原因と考えます。
が、いまだにこの時のことを思い出すとイライラします。
この人は人の気持ちを想像することができない人だな、と。
自分の気持ちをうまく整理できず、絶望と不安に押しつぶされて
入院中は病室で何度も何度も泣きました。
ほんと、個室で良かった(笑)。
形成外科の先生曰く、神経再建は成功したとしても動きは元の最大50%程度しか戻らない。
(しかも手術後に言われる始末...。いや、頭が真っ白で私が聞いてなかっただけなのか?)
人によっては再建手術をしても動きが戻らず一生麻痺が残ることもある、とも言われました。
顔が?もう動かない?元には戻らない?
本当に怖かったです。
自分の再生能力を信じるしかありませんでした。
幸運にも、この麻痺は日がたつにつれ、だんだんと元に戻っていったのでした。

読んでいただき感謝。皆様の1票が励みです
耳たぶの裏あたりにある耳下腺には脳から来た顔面神経が通っていて、耳下腺で枝分かれし、おでこ、目、鼻、口などの顔の各パーツに神経がつながっています。
niyonの場合、この耳下腺にあった3.5cmほどの腫瘍が顔面神経にまとわりついていました。
悪性の場合、このように神経にまとわりついて(=神経浸潤して)いることが多いそうです。
神経を切ると顔の動きに麻痺が出るので、普通は残す方向で手術します。(特に良性の時は)
でも術中に腫瘍が悪性だと判明したため、とにかく転移する恐れのある悪性腫瘍を取りきることが優先となり、やむなく耳下腺にある顔面神経はほぼ切断されました。
かろうじて、切らずに残った神経はおでこや眉へ続く神経だけ。
目や鼻、口に続く神経はほとんどが切断されました。
腫瘍を取った後、同時に形成外科医による神経再建手術が行われました。
肩につながる首のあたりの神経をいくつか持ってきて切った神経の箇所に人工的につながれました。(と後で知ってびっくり。)
でも神経ってそんなに簡単につながるものではなく...。
●手術直後の麻痺
手術直後、基本的に顔の左半分(左の耳下腺を切ったから)はすべて動かなくなりました。
耳周り、つまり耳後ろから首、顔にかけては、触っても感覚がありません。
手術で耳下腺を触ると、神経を切断しなくとも術後直後は一旦顔面麻痺が出ることがほとんどだそうです。が、私の場合は一旦神経を切断しているのでどこまで回復するか不明でとても怖かったのを今も覚えています。
特に目と口の麻痺は、生活に不便が伴います。
加えて、鏡で自分の顔を見た時のショックときたら!
どんなに力を入れても顔の半分は全く動かず。
笑顔を作ろうとすると半分しか動かないので顔がゆがみます。
本当に精神的にきつい日々でした…。
神経再建がうまくいったとしても、動きが戻ってくるのは何か月も後なのです。
本当に顔の運動機能が戻るかどうかもわかりません。
まず目。
左目だけ、パッチリ開けたり、目を閉じたり、まぶたを自分の意志で動かせません。
常に、ぼーっと眠そうな感じで目が開いています。
瞬きもできず常に目が開いているので、防衛反応で乾きを防ごうと目からは涙が溢れます。
手術後、麻酔が切れた状態から左目は涙があふれている状態で、前がちゃんと見えません。
もちろん本もスマホやテレビの画面も涙で歪んでちゃんと見えない!
術後のメールのやり取りも辛く、本当に不便でした。
主治医からまぶたにテープを張って強制的に左目だけ常に閉じておくこともできると提案されましたが、、、顔や首が思うように動かない中で片目生活に自信がなかったので、このまま様子を見たいと伝えました。
手術10日後には涙がだんだん減ってかなりスマホの画面もテレビも見れるように。
ただ今度は目の乾燥により角膜に傷がついて失明しかねないと言われ、主治医から涙成分の目薬を処方してもらい、1日何度も目薬をさす毎日が1~2か月くらいは続きました。
次に口。
左側がうまく動かないせいで、口が少ししか開きません。
入院中大好きな苺を差し入れてもらいましたが、、、小さめの苺でも口に入らない。
1個を1/4にカットして、やっと口にねじ込めました。(食い意地はりすぎ?)

↑手術3日目の食事。まだお粥です。
口開かないから仕方ないけど、飽きたー。
量が多いわりに、ほぼ水分なのでお腹がすぐ減るのです。
口に「ん」と力を入れることもできないので、最初はコップから水を飲むのも難しい。
いつもの調子で飲もうとすると、こぼれるこぼれる(笑)。
手術直後はストローも使ってみましたが、徐々に動く右側の口で飲むことを覚えました。
のどが渇いていてもごくごくは飲めず、水もお茶も少しずつ、少しずつです。
歯ブラシも横にしてやっと口に入る程度しか、口が開きません。
もちろん、くちゅくちゅうがいも簡単ではなく。
いつも通りやると、左側の口から水がぶわーっとこぼれます。
歯みがきの時はふくむ水を少量にして、こぼれないように左側の口を手で押さえて、何とか攻略。
これで虫歯にでもなったらシャレにならないし、口が大きく開かないので今後歯医者で治療とかできるの???
不安がどんどん募ります。
一生このままだったらどうしよう、と。
神経再建のために持ってきた神経は肩につながる神経の一部だったそうですが(あとで言われた…)
形成外科の先生が心配しておられた肩が上がらないということは幸運にもありませんでした。
ただ、首のリンパにも1か所転移しておりメスを入れたためか
術後1か月くらいは腕が上げにくかったです。
顔の麻痺は、精神的なショックもかなり大きかったのでした。
腫瘍が悪性=癌であったこと
顔に現在かなりの麻痺が出ていること
それによる生活の不便があること
目と口が動かないだけで表情がかなり乏しく見えること
笑うと顔がゆがみ、気持ち悪い顔になること
もしかしたらこの麻痺が一生続くかもしれないこと、、、
悲しくなる事実ばかりでした。
神経を切っていないおでこも、もちろん目じりも、力を入れても笑顔を作ろうとしても
シワ1つ入りません。
つるっとして、感覚もなくて、アンドロイドみたい、と思いました。
服を着たら見えない場所だったらどんなに良かったか、
こんな顔で一生生きていくくらいなら、手術せずにそのまま放置して死んだほうが良かった?
ほんまにやった方がいい手術やったんか…?
やらない方が良かったんちゃうかな?
そんな思いも何度もこみ上げました。
コロナで家族のお見舞いもなく(病院が禁止している)
悲しみと苦悩を直接吐き出せる相手もなく
家族とはLINEメッセージだけでやり取りする日々。
夫は仕事がかなり忙しい時期、あまり心配をかけたくない。
父親からはきれいごとのような安っぽい励ましの言葉が。
娘の一大事にまるで人ごとのような態度に怒り狂いました。
憶測では、私の状態を見ていないから楽天的に考えていた、夫が配慮して深刻すぎないよう手術状況を伝えた、父親の語彙不足、父親が人の感情を慮る能力がない、これらが原因と考えます。
が、いまだにこの時のことを思い出すとイライラします。
この人は人の気持ちを想像することができない人だな、と。
自分の気持ちをうまく整理できず、絶望と不安に押しつぶされて
入院中は病室で何度も何度も泣きました。
ほんと、個室で良かった(笑)。
形成外科の先生曰く、神経再建は成功したとしても動きは元の最大50%程度しか戻らない。
(しかも手術後に言われる始末...。いや、頭が真っ白で私が聞いてなかっただけなのか?)
人によっては再建手術をしても動きが戻らず一生麻痺が残ることもある、とも言われました。
顔が?もう動かない?元には戻らない?
本当に怖かったです。
自分の再生能力を信じるしかありませんでした。
幸運にも、この麻痺は日がたつにつれ、だんだんと元に戻っていったのでした。



- 関連記事